途上国支援

発達障害者に優しい地域創り

発達障害者に優しい地域創り

日本発達障害連盟は、カンボジアの貧村で「知的障害者に優しい地域創り」活動をしています。このコーナーでは、活動の背景、あらまし、そして、活動によって変化した地域社会と知的障害者の生活について報告します。  

背景

何故「地域住民」か?

日本の障害者支援は政府が担っていますが、カンボジアではNGO(非営利団体)が担当しています。政府にお金がないからです。そして、知的障害者の場合、全体の0.04%(2005年現在)しか支援を受けていません。つまり、ほとんどの人は一生何の支援も受けられません。また、社会の差別も強く、彼等の生活は厳しいものです。こうした状況下で有効な支援は何でしょうか。望ましいのは地域住民が日々の暮らしの中で支援することです。理由はいくつかありますが、一つは、費用がかからないことです。次に、偏見や差別を解消できるという点があります。偏見や差別は「知らない」から起きることですから、地域住民が直接かかわるようになれば「変な人だと思っていたけど、知ったら楽しい人だった」となり消滅するのです。そして何より、生涯を通じて周りの人の手助けを必要とする知的障害者にとって、日常を共有する住民の支援は心強いからです。 

知的障害者に優しい地域社会を創る方法

さて、問題は、そうした地域社会を作る方法です。「必要性」を説いても役に立ちません。なぜなら、人は「自分とは関係ない」ことには興味をもたないからです。そこで、事業では、住民の「関わり」作りから始めることにしました。そして、住民自身の手で知的障害者を支える方法を考えて実施してもらいました。 
 

活動

活動期間

2005年~現在

活動地

カンボジアの5州(カンポンスプー、カンポンチュナン、カンダル、プレイベン、プルサット)45村

活動

活動地では知的障害者に対する偏見や差別が大きく、暴行やレイプが頻繁に起きていました。その結果、知的障害者は住民を恐れて避け、彼らの態度は住民の偏見を増幅させていました。つまり、悪循環でした。活動では、この悪循環を断ち切って住民と知的障害者がお互いを知り合うプロセスを作りました。具体的には、住民自身が①知的障害者の状況を分析→②活動計画作製→③実施するしくみを作ったのです。住民は頻繁に会合を開いて活動内容を議論し、自らの手で知的障害者の支援をしました。そうして、日常的に知的障害者の支援を話題にするうちに、住民の中にあった偏見が消えていました。

貧富の定義活動開始前の地域社会と知的障害者の状況

地域の状況

対象地の人口は30,668人です。主用産業は農業ですが、中流以上の家庭の若い人達の中には近隣の繊維工場で働く人たちもいます。住民の生活は川や池や森などの自然に依存していて、衛生的な飲料水や蚊帳などの利用は見られません。また、多くの家庭にはトイレや水浴び場はなく、人々は戸外で用を足し身体を布で覆って水浴びをします。教育に関して言えば、約70%の子供が小中学校教育を受けています。ただし、内戦(1976-79年)時代を生き抜いた成人―特に女性―には読み書きができない人が多くいます。経済状況は、(州の行政によれば)20%の家庭が1日の収入が0.5ドルの貧困ライン以下の層に属し、これは、住民自身が分析した経済状態(表1参照)とも合致します。医療施設としては、各州に公立病院がありますが、公的医療保険制度はありませんので治療費で、あまり利用されていません。娯楽としては、中流以上の家庭の持つテレビまたはラジオ、村内の全住民が集まるお祭りやセレモニー(1年に約10回)、結婚式等(約4-5回)があります。なお、娯楽ではないが、住民全員の協働作業である田植えや稲刈りは地域社会の行事です。 

2005年当時。報告書より抜粋